「良い成績」こそが学校を生き抜く武器

 石渡さんは「一般論」として、進学校特有の事情を明かす。

「狭い学校社会の中では、成績の良しあしが校内の序列に関係します。特に偏差値が高い進学校は、成績の結果で評価されやすい。良ければ称賛されるし、悪ければ教師からはっきりと怒られることもある。普通の高校以上に、生徒同士のヒエラルキーが成績で決まることが多いので、良い成績をとり続けることが学校を生き抜く最大の武器なんです」

 成績が悪ければ自分の立場も悪くなることがわかっているからこそ、「良い成績をとる」ことを死守しなければならない、という強迫観念につながるのかもしれない。

 さらに石渡さんは、高校生ならではの「プライド」がカンニングを誘発する可能性も指摘する。

「進学校に通っている子どもたちは、昔から頭が良かった子が多い。昔からできた自分を守りたいプライドに加えて、最も強いと思われるのは『親や教師から褒められたい』という動機です。それが一時しのぎだとわかっていても、親や教師からほめられるためには成績を上げなければならない、という有形無形のプレッシャーがあり、カンニングをしてしまうことはあると思います」

 遺族から提訴されたことについて、学校側は取材に「訴状が届いていないので、コメントはできない」と回答したが、行き過ぎた指導だったかについては「指導は行ったが、その際に厳しく叱責したという事実はない」としている。

 カンニングはしてはらない行為だが、その“罪の重さ”よりも命の方がはるかに重いことは言うまでもない。

(AERA dot.編集部・小山歩)

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