山田よね(土居志央梨、左)と猪爪寅子(伊藤沙莉)。NHK連続テレビ小説「虎に翼」より(写真:NHK提供)

 (2)寅子の恩師=糸子の父=小林薫。気が弱いくせに殴る蹴るの暴君から一転、進歩的かつ穏やかな法学者に。(1)と(2)だけで、「カーネーション」ファンは頬が緩んでしまうのだ。

しんどそうな女性たち

 最後に一つ、「虎に翼」で気になっていることを書く。通りを歩いている女性たちが明るくないのだ。

 例えば甘味処(よく出てくる)への道の途中、セーラー服の小学生らしい女子が歩いている。後ろから詰め襟の男子2人が走ってきて、その子をからかう。別の日、その女子が泣きながら歩いている。お茶の水あたりの橋もよく出てくるが、そこを歩く女性のしんどそう率が高い。

 寅子は法律という道を見つけたお嬢さんだ。恵まれている。そうでない女性がたくさんいる。そのことを通りすがりの女性たちが表している。勝手にそう解釈し、将来の寅子への期待を一層ふくらませている。(コラムニスト・矢部万紀子

※AERA 2024年5月13日号

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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