現在はボタニカルガーデンでは、4月の週末ごとに個別の小さなイベントが開催されているが、フェスティバルは再開していない。
ルーズベルト島は、染井吉野がほころび始める4月初旬から関山が終わる5月まで、相変わらず週末になると多くの観光客が訪れて、みんなおしゃれをして写真の撮影会をやっている。この間はトラムも観光客で長蛇の列となり、島の住人たちにとって、通学や通勤に支障が出る恐怖の期間でもあるという。
「SNSの発達がブームの一つの原因だと思うの」とアニタさん。
「皆、『私もSakuraを見てきました』という写真を出したいのでしょう」
特に中近東系の人たちは、華やかな民族衣装に身を包んでやってくる。
物価高もブームに貢献
「このお花見ブームは、日本の文化の人気度が高まってきたことと比例しているようにも思えるんです」
アニタさんがそう話す。
すしの「Omakase」やラーメンなどの食文化の安定した人気と、アニメとマンガの爆発的な人気で、「日本に関する物は何でもカッコいい」というブームの中にお花見も入っているというのである。ついでに言うなら、このところのニューヨークの急激な物価上昇で、人々はお金のかからないエンターテインメントを求めていることもある。ニューヨークの長い冬がようやく終わり、外に出たいが財布の中身が寂しい、という人たちにとっても気軽に楽しめるのがお花見なのだ。
このところ米国では植物の外来種への風当たりが強くなり、栽培に関しても厳しくなりつつあるが、今のところ「桜」がその対象として攻撃される気配はない。
お花見ブームは当分続きそうである。
(現地ジャーナリスト・田村明子)