ガザ支援の学生たちを支援するヨギタ・ゴヤル教授(右)

 講堂の前で「UCLAの教員とスタッフは学生と共に立ち上がる」と書かれた青色の横断幕を掲げて立っていたのは、英文学とアフリカン・アメリカンスタディーズを教えるヨギタ・ゴヤル教授だ。20年間UCLAキャンパスで「人種」と「帝国」の関係について研究してきた彼女はこう語った。

「パレスチナ支援のために行動する学生たちを誇りに思う。ガザで女性や子供たちを含む民間人が爆撃され、吹き飛ばされて殺される中で、これまで米国の大学経営陣はその虐殺を一切阻止してこなかった」と語る。

 東京で高校時代を過ごしたことがあると語るゴヤル教授は「私は日本語を覚えました」と日本語で筆者に語り、かすり地のシャツを着てテント陣営の真ん前で立っていた。

 一触即発の緊張感がみなぎるこのキャンパスで、小柄な彼女が、もし乱闘に巻き込まれたらという不安はないのだろうか?

「自分の身の安全よりも、大事なことがこの世にはあるから」。そう静かに言った。

 教授がデモに積極的に参加することで、大学経営陣からにらまれる可能性はないのか、と聞くと「自分のことは一切心配していない」と断言した。「大きなリスクを取っているのはむしろ学生たち。キャンパス内で警察に逮捕されるというひどい事例が他大学で次々起きる中でも、うちの学生たちはあえて立ち上がった。その勇気に私はどれだけ触発されてきたか」。

 UCLAでのインタビューを終えて、キャンパスを後にし、翌日、5月1日の朝起きると、LAタイムズの一面には「UCLAのキャンパスで暴力が発生」という記事が載っていた。慌ててニュース映像を探すと、テント陣営の学生たちに向かって、発火した花火を投げつけ、用のスプレーを浴びせるグループの映像が映っていた。

 筆者が数時間前まで取材していた場所を囲っていたあのベニヤ板と鉄柵を何十人もの人間が剥がそうとし、内側にいる学生たちは、そのベニヤ板を盾に身構えていた。

 流血した学生たちをテントの内側で救護する学生たちの姿もあった。

 映像の中に、アーメッドとゴヤル教授の姿を探したが、今のところ、見つかっていない。

 大学側に雇われたセキュリティのうちのひとりが昼間こう語っていたのを思い出す。

「自分は会社から派遣されてここにいるけど、夜がひどいんだ。夜が。あらゆる暴徒がやってくるから」。

 流血する学生たちやテントの上で花火の閃光が散っていた。

 そして、その十数時間後、多数の警察がUCLAのキャンパスに突入し、テントを壊し、百人以上の学生を逮捕した。

(ジャーナリスト・長野美穂=米ロサンゼルス)

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