UCLAのキャンパスの中に設置されたガザ支援学生たちのテントの数は、4月30日の段階でおよそ100近くに達していた。
「デモに参加している学生の総数はわからないけど、2日だけ泊まっていく学生もいれば、毎日いてここから授業やバイトに通う学生もいる。テントで寝泊まりする教授もいるし、食料などの差し入れも豊富にある。基本、出たり入ったりは自由だから、全部合わせれば、参加者は数千人はいると思う」。
4月29日の夜中には、ガザ支援のテント設置に反対する何者かが、白いネズミがたくさん入ったバックパックをアーメッドたちのテントがある横の道に置き去りにし、夜中に白ネズミが一斉に地面を這い回る様子が、ビデオ撮影され、SNSで拡散されていた。
「ネズミを使った嫌がらせだけでなく、夜中になると外からやってきて闇に紛れて暴力をふるうグループが複数存在するんだ。大音響で音楽を鳴らし、ビデオを流したりするいやがらせもひっきりなし。だから夜眠るのはかなり難しい」とアーメッド。
だが、彼は「抵抗運動をする時点で、自分たちを守れるのは、自分たちだけだと覚悟している」と語り、外からやってくるグループがふるう暴力の制圧に関しては、大学には特に期待していないと語る。
「UCLA側にはイスラエル援助の投資をやめてくれることだけを要求している」。
アーメッドたちの活動を「反ユダヤ主義だ」と非難し、デモ参加学生たちを「テロリスト」や「ハマス支持者」と呼ぶグループが多数存在するが、それに対してどう思うか聞いてみた。
「僕たちは反ユダヤ主義ではない。その証拠に、ユダヤ系の学生も大勢このデモに参加して同じテントで寝泊まりしている。僕たちはイスラエルという国のガザに対する軍事行為に反対し、ガザの人々を殺すのをやめてほしいと要求しているだけ」。
アーメッドたちのテント陣営の反対側にある芝生スペースの上には、イスラエルを支持するグループが設置した「ハマス、人質を解放しろ」と印刷されたバナーと、巨大なスクリーン画面がある。
その画面では昨年の10月7日にイスラエルで起きたハマスによる民間人襲撃の映像シーンが繰り返し流されている。
ユダヤ教のシンボルである星型のペンダントをした男子学生たちがその画面の周辺に集まり「パレスチナ支援の学生に占拠されたこのキャンパスは、もはや自分たちにとって、安全ではない」とLAの地元のテレビ局のインタビューにこたえていた。
さらにユダヤ系の学生たちは「図書館や校舎に入るのにデモ隊に入り口を塞がれて、遠回りをしなければ入れない。なぜ高い学費を払っている自分たちが、試験の直前にこんな思いをしなければならないのか?」と語った。
UCLAのキャンパス内で、デモ隊のテントが集結している芝生のエリアを挟んで、片側にパウエル図書館、そしてもう片側にロイスホールと呼ばれる講堂と教室が合体した建物がそれぞれある。
そのどちらの建物の周囲も、大学側が設置した鉄柵でぐるりと囲まれており、一般の学生の歩ける道が限られていて、まるで迷路のような構造になっている。
「図書館への迂回道はこちら」というプラカードを見つけて進むと、図書館に入れる入り口が見つかったが、UCLAの学生証を提示した場合のみ中に入れる。通常、公立大学の場合、誰でも自由に校内に入れるのだが、すでに規制され、大学側に雇われたセキュリティ会社のスタッフが立っていた。
さらにテント陣営に通じる入り口には複数のチェックポイントが設置されており、ガザ支援の学生たちが、さまざまな色のリストバンドを仲間に配り、そのリストバンドの色によって、その入り口から入れる学生を選別しているようだった。
イスラエル支援グループがそのチェックポイントを突破しようとすると、毛布を持ち、マスクをした複数の学生たちが彼らを取り囲み、部外者を中に入れさせないシステムができていた。