
トルコで感じたバレーと子育ての両立
――想像を絶しますね……。手術後はいかがだったでしょうか。
専門医の先生に「おなかの中がきれいになったから妊娠しやすくなるよ」と言われたんですけど、その後もなかなかできなかったです。妊活の専門的な病院に通って、年齢的にも欲しいなあと思ったときに妊娠しましたが、体調はずっと安定しませんでした。先生からは「もしかしたら最悪のパターンも考えてね」と言われていたので、安心することはありませんでした。
――そのぶん、出産したときの喜びは大きかったかと思います。
そうですね……感激しましたね。この世に生まれてくれてありがとうという思いになりましたし、生まれてきてくれた息子に感謝しています。出産は普通分娩だったんですが、こんなに大変なんだという思いとやっと終わったという感情が入り混じって不思議な感じでした。旦那さんは喜びを無言でかみしめていたので、私が話しかけたら「幸せかみしめたいから黙って」と言われました(笑)。驚いたのは赤ちゃんが男の子だったことですね。私も旦那さんも妹がいて、めいっ子もいて女の子ばかりなので、私の子どもも勝手に女の子と思っていました。だから、女の子の名前しか考えていなくて(笑)、義理の祖父が第1希望で考えてくれた煌太郎に決めました。

――高校、東レの先輩で日本代表でも共にプレーした荒木絵里香さんは2014年1月に女児を出産後、当時は異例の現役復帰を決断して、21年までプレーしました。女性アスリートの出産を取り巻く環境も変わってきていると感じますか。
少し前までは、子どもが欲しいならバレーをやめるという選択が主流でしたが、今はいろいろな生き方が尊重される世の中になっているように感じます。岩崎こよみ選手(埼玉上尾メディックス)が出産後に復帰して今年も日本代表に選ばれていますし、赤ちゃんを望む人がバレーを続けられる選択肢は広がっているのかなと。
私は現役時代にトルコで2シーズンプレーしたのですが、バレーだけでなく、一人の女性の人生を尊重してくれる文化でした。「妊娠したから休むよ」っていなくなって、「子どもが生まれたから復帰するね」ってフランクに戻ってくる。びっくりしました。日本だったら「この時期にいなくなるの?」って一大事になるけど、トルコでは選手が出産して現役復帰するのが日常の光景でした。練習中も体育館で子どもが遊んでいて、練習試合でコートに入ってきて中断したりしたこともありました(笑)。子どもと一緒にいられる環境が自然にありましたね。