春の園遊会での愛子さま=2024年4月23日、東京・元赤坂の赤坂御苑、松永卓也撮影(朝日新聞出版/JMPA)

 なんてハッピーなご一家だろう――で終わらないところがつらいところだ。なぜかというなら、皇室のもっと大きな問題がある。ハッピーが増すと、余計にそのことに目をつぶっているという思いが募る。例えば園遊会の4日前(4月19日)、自民党が安定的な皇位継承の確保に関する懇談会を開いた。政府の有識者会議が2021年末にまとめた皇族数の確保策、「女性皇族結婚後も皇族の身分を保持する」「旧宮家の男系男子が養子として皇族復帰する」の2案を「妥当」とした。そのうえで最終的な対応は、懇談会の会長である麻生太郎副総裁に一任することでまとまった――そう報じられていた。

 これ、なかなかつらい報道だと思う。有識者会議から2年以上経ち、今頃やっと「妥当」というゆっくりさ加減。そもそも「皇室における人手不足対策」という設定が、天皇制の最大の危機から目をそらすためのように思える。皇室の次代を担う男性が悠仁さまだけという現実がある。それを「熟慮」した2年超でなく、「放置」の2年超だったのではないか。そう思ってしまう。

 天皇制は憲法に定められた制度ではあるが、構成する一人ひとりは普通に「家庭」に暮らす生身の人間だ。そのことを春の園遊会で目の当たりにしているから、ますますつらさが増す。愛子さまは「皇族の身分を保持」される女性皇族としてこれから生きていく。仮にそうだとして、「男系男子」でつなぐ天皇制にあって「男系女子」が結婚しても生涯「皇族の身分」でいることは幸せなのか。生身の人間が構成する制度がどうあるべきか。そこが一顧だにされていない気がして、つらい。

 園遊会の4日後(4月27日)、共同通信社が皇室に関する世論調査の結果を公表した。天皇陛下の即位5年を前にした全国郵送調査で、皇位継承の安定性について「危機感を感じる」が「ある程度」を含め72%に上ったという。女性天皇を認めることは計90%が賛同したそうで、賛成の理由は「天皇の役割に男女は関係ない」が最も多く50%、反対理由は「男性が皇位を継承するのが日本の文化にかなっている」が45%で最多だという。

 こういうところを考えてほしいんですけど、自民党、っていうか麻生さん。と呼びかけても届かない。そんな気がしてしまい、つらい。

(コラムニスト・矢部万紀子

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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