三宅さんは神奈川県の山里に暮らし、森で植物を撮影することや林業などの取材をすることを生業(なりわい)としている。そのため、ヤマビルとの遭遇は日常茶飯事で、あらゆる部位に吸い付かれた経験があるという。
「以前、テレビ局のロケに同行したとき、ヤマビルが若い女性ディレクターの首に吸い付いたんです。『きゃー』と叫び、恐怖のあまり、泣き出してしまった。彼女も『上から降ってきた』みたいなことを言っていました」(三宅さん)
やはり、ヤマビルは木の上にもいるのでは?
「実は、ヤマビルってそうとう俊敏なので、そんなふうに誤解されるんです。やわらかい肌を好むので、足元から首筋までものすごい勢いで登ってくる。要するにスピーディーな尺取り虫みたいな感じです」(三宅さん)
ヤマビルは普段、落ち葉の裏などに潜んでいる。黄土色で、成長すると体長5センチほどになる。移動するときは体長が数倍に伸びる。
個人差はあるが、ヤマビルが皮膚に吸い付いても自覚症状がない場合もあるという。
「ときどき親指の先くらいの丸いものが家の中に落ちているんです。それは血を吸い終えて皮膚から外れたヤマビルで、そのとき初めて、ああ、やられたな、と思うくらいで。くっついているときは実感がない」(三宅さん)
水道周辺や日陰に生息
なぜ、吸血されている間、自覚症状が表れないのか?
環境文化創造研究所内ヤマビル研究会の谷重和さんによると、ヤマビルは吸血のために肌にかみつくと同時に痛みを感じさせないモルヒネのような物質を出すという。
「そのため、吸血後、衣類や靴下などが赤く染まっていることに気づいて、ヤマビルに吸い付かれたのを知ることが多いんです。ヤマビルは吸った血が凝固しないように、ヒルジンという物質を分泌するので、血が止まりにくい。それだけに驚かれると思いますが、人命にかかわることはありません」(谷さん)
吸血中のヤマビルを見つけた場合は、どうすればいいのか?