好天に恵まれ、4月にもかかわらず最高気温が30度を超える「真夏日」になったところも相次いでいる、今年の大型連休。アウトドアのレジャーが楽しいシーズンだが、登山やキャンプなど、自然の中で過ごす際に気をつけておきたい「生物」がいる。記者の「実体験」を、あらためて紹介する(この記事は、「AERA dot.」で2022年7月2日に掲載した記事の再配信です。肩書や年齢などは当時のもの)。
【写真】ぷっくりとした「フタトゲチマダニ」(※アップで表示されます)
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各地で次々と梅雨明けし、6月から厳しい暑さが連日続いている。その猛暑を逃れようと、夏休みに自然豊かなキャンプ場でのんびりと過ごす計画を立てている人もいるだろう。ところが、知らぬ間に恐ろしい生物が忍び寄り、気がついたときには悲鳴を上げる事態も起こりうる。「マダニ」と「ヤマビル」だ。この時期、活発に活動し、人間の皮膚に張りつき、血を吸う。特にマダニは特効薬のない「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」を媒介することも問題になっている。対策などを専門家に取材した。
えたいの知れない生きものが皮膚に張りつき、うごめいているのを目にしたときの恐怖。まずは、筆者がマダニにやられたときの体験を語りたい。
3年前、家族で神奈川県のキャンプ場に出かけ、帰ってきた日の夜のことだった。
就寝前、トイレに行くと、股間に何やら、茶色っぽい小さな粒がついている。さっき風呂に入ったのに、なんで落ちなかったんだろう。おかしいな――。
ゴミだと思い、指ではじいたもののビクともしない。えっ、なんで?
再び指で触ったときだった。
「うぁぁぁー!」
深夜のトイレで絶叫した。突如、小さな物体から足が突き出て、動いたのだ。
一瞬で眠気が吹き飛んだ。
これはたぶん、ダニだ……。
まだしっかりと張りついたままだが、急いでパソコンを立ち上げた。画面の写真と見比べて確認し、対処法を調べる。すると、無理に引っ張るとダニの一部がちぎれ、皮膚の中に残り、傷口が化膿してしまう、などとサイトに書かれていた。あそこが膿(う)んだら大変だ――。
だが、吸血が終わると自然に外れる、とも書かれていた。
どんな場面でダニにやられたのか、まったく思い浮かばない。よりによって、こんなところに食いつきやがって――心の中で悪態をつく。
場所が場所だけに子どもたちには黙っていた。妻には報告したが、無言である。
そのうちにとれるのではないか? かすかな希望を抱き、数日間、様子をみたが変化はなく諦めた。トイレに行くたび、アイツを目にするストレスに耐えられなくなったのだ。
近所の皮膚科を訪ねた。