取材を続けていると、別の意味でびっくりする光景に出くわした。郊外の幹線道路を車で走っていると、小松菜のような青々とした菜っ葉が栽培されている農地を見かけた。また、世界遺産のイマーム広場や周辺の公園、街頭の樹木や芝生も、きれいな緑に覆われている。そこへホースで絶えず水を撒く作業員たちがいる。使える水はほとんどないはずなのに、どういうことか。

 答えは、地下水だった。枯渇した川に頼れなくなると、地元の人たちは他に水源を求め、井戸を次々に掘るようになったのだ。しかし、地下水を汲み上げることは、地盤沈下という新たな問題を招いていた。あと10年で住めなくなると言われるくらい、イスファハンは新たな危機に直面していた。

地盤沈下の無人住宅街

 ザーヤンデ川から北へ7キロ、実際に地面が陥没した現場へ向かった。ハーネ・イスファハンという地区の一角に住宅街がある。不動産業を営む関係者に案内を頼み、住宅街のゲートの中に入った。一区画あたり平均500平方メートルの広さで、庭付きの2〜3階建ての戸建てが整然と並ぶ。

ハーネ・イスファハン

 だが、生活のにおいがしない。それもそのはずで、9割は空き家だという。家屋を囲む塀は傾き、ひびが入っているところが目立つ。住宅の前を通る濃い灰色をしたアスファルトの道路もひび割れていて、折れ線グラフのような亀裂が数10メートルにわたって何本も走っていた。波を打って盛り上がっている所も目につく。いずれも地盤沈下の影響とされている。

 ここの住宅を扱う不動産仲介業のシーナ・アリハニ(30)に話を聞いた。

 「家を売って違う場所に引っ越す人は増え続けているのですが、新たな買い手を見つけるのは難しくなるばかりです」

 この地区で地盤沈下が起きるようになったのは4〜5年前からで、それに伴って家の購入者が見つからなくなっているという。

 「地区全体で地盤が下がることになっていけば、本当に住めなくなります。仕事や住まいを変えないといけない日が来るのは、私にとっても目の前に迫る現実です」

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国内の至るところで地盤沈下