ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの連載「今週のお務め」。32回目のテーマは「マッチョな欧米人と、たくましい女性車掌」について。
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コロナも落ち着き、この春は外国人観光客でごった返している日本列島。東京駅から大阪方面への新幹線に乗る時など、亡命かと思うぐらい大量のトランクを持って移動する外国人たちに行く手を阻まれることも少なくありません。
今年は特に欧米系のツーリストが目立ちます。私が子供の頃は、首からコンパクトカメラをぶら下げ、ルーヴル美術館のモナ・リザや大英博物館のミイラに向かって、お構いなしにフラッシュを焚く日本人旅行客の姿というのが、「経済大国日本」の象徴でしたが、今や形勢は完全に逆転しました。
先日乗った新幹線では、30代前半とおぼしき欧米人4人組(男2・女2)が、グリーン席を8席も買い上げて豪遊している光景に出くわしました。「自分がリザーブしている席なのだから自由に座って何が悪い?」とばかりに、前列シート(彼らの荷物置き場と化していた)のヘッドレストのさらに上部に、靴を履いたままの脚を伸ばしているではありませんか。正直申して、お行儀が良くありません。威圧感も半端ない。しかも連れの女性は、シートの座面に土足で体育座りをしている……。
水商売時代、私が客に対してキレる理由第一位は「土足でソファに乗る」でした。「足、下ろしてください」「足、下ろしなさい!」「足、下ろせって言ってんのが聞こえねえのかよ!」。外国かぶれしたOLや、アーティスト気取りの若造たちに、何度声を荒らげたことか。