台湾は舵を切った

 石垣島から約300キロの台湾も4月3日朝に大きな地震に見舞われた。マグニチュード7.7だった。台湾の地震のニュースを見て感じたのは、その対応ぶりが際立っていたことだ。体育館の中に整然と並ぶ家族用テント、栄養が考えられた弁当など。

 新型コロナウィルスの時も台湾は人口が日本の5分の1程度だが、死者の数は2020年5月31日で日本の約400人に対して、わずか7人だった。マスクがどこの薬局にあるかを携帯電話のマップでわかるようにするなどITを駆使した対応ぶりが日本でも評判になった。指導者、官庁職員の優秀さがあってのことだ。日本は東日本大震災以降も幾度となく自然災害による大量の住民の避難を経験しているが、避難場所では雑魚寝とおにぎりの印象が強い。

 台湾も島国で地震国。資源がなく、平地も少なく人口密度が高いなど日本と条件が極めて似ている。原発はどうなっているのか。1970年代以降、第1~3原発(計6基)が稼働してきたが、福島第一原発事故後に脱原発に舵を切り、第1、2原発を停止、第3原発は2025年に稼働を終える予定だ。原発に代わるものとして洋上風力発電に力を入れており、日本の洋上風力発電の目標と同程度の設備容量を日本の目標年度より5年早い2025年に達成しようとしている。

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北村俊郎

北村俊郎

1944年滋賀県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、日本原子力発電株式会社に入社。東海発電所、敦賀発電所など現場勤務を経験したのち、理事・社長室長などを歴任。2005年に退職。2012年まで社団法人日本原子力産業協会参事。福島第一原発の事故により、帰還困難区域にある富岡町の自宅を離れた。現在も避難を続けている。著書「原発推進者の無念」(平凡新書)など。

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