が、彼らは、2014年以降2019年までの映画館の来場数を調べほぼ前年度比増になっていることに着目。
たしかにネットフリックスの日本の会員数は2018年から2020年にかけては約230万人から約500万人と倍増しているが、牽引しているのはオリジナルのシリーズであることを示し、参加型の映画館とは共存していく未来を描いた。
2023年の発表「公共財としての放送アーカイブは成り立つのか」(木下晴、松本花音)は、NHKのアーカイブ事業に焦点をあてたユニークな研究だった。
この班は他の新聞学科の授業で民放の元テレビマンが、「NHKは、戦時中の映像・音声記録・ニュース映画をほぼ独占的に所有しているが、借りようにもひとつの番組の予算が消し飛んでしまうほどのお金がかかる」と言っていたことをきっかけに、NHKのアーカイブ事業他を取材した。その取材の結果、実は、民放のほうが映像の貸し出しの単価は高いことが料金表というハードプルーフから明らかになったりした。
そして二人は、実際に過去のニュース映像をひとつひとつデータ登録をしているその現場を見ることになる。ここでは報道畑で理事まで務めた人が、過去のニュース映像を見て、根気強く、その映像にタグをいれていた。
「このようにすれば、確かに検索は楽になる。権利処理も進んでいて、料金も民放に比べれば破格に安い」と学生は発表し、公共メディアならではのアーカイブ事業の意味を強調した。
2024年4月5日からNHKで放送の始まった「時をかけるテレビ」はこうした過去のアーカイブ映像を使う番組で、この学生の発表は、こうした番組が成立する基盤について可視化したことになる。
初期の学生の中には、NHKや民放、全国紙、ブロック紙、地方紙などに就職し、現場でこの変化の波を肌身にうけて働いている人もいる。
最終回の発表が終わったあと、「みなさんへ」と題したスライドで、巣立つ諸君に毎回こんなことを言っている。
Develop your career.
この言葉は、コロンビアのジャーナリズムスクールの卒業式で、元ワシントン・ポストの社会部長だった副学長のスティーブ・アイザックスが私にかけてくれた言葉だ。
キャリアをどんどん発展させろ。そうすれば、技術革新によって環境は変わっても、やっていける、その先に新しい世界がある──。
「2050年のメディア」の授業は、この春からは聖心女子大学で開講している。
春は出会いと別れの季節。別れを惜しみ、新しい出会いに感謝し、その先に進もうではないか。
※AERA 2024年4月29日-5月6日合併号