引きこもり生活については別の回でお話ししますが、半年ほどたったころに若者支援の団体を紹介していただく機会があり、引きこもり改善プログラムに参加した息子は、半年ほどで別人になって戻ってきました。別人というよりも、本来の人懐っこい息子に戻っていたのです。
小さい頃のチャレンジ精神を取り戻した息子は、英語力ゼロで単身ドイツに出かけ、初の海外旅行で一人旅を満喫し、前向きな人生を手に入れました。現在は、一番向いていないだろうと思っていた会社員として、毎日働いています。
私自身も、子どもが不登校になったことでコミュニケーションの力をつけるプログラムに出合い、子どもへの声掛けを変えることができました。子どもたちは少しずつですが確実に変わっていきました。
そんなことから、2番目の子が不登校になった時も、「うん、学校に行けない時期があっても大丈夫だから」「学校に行っていたらできないことをやろう」と前向きにホームスクーリングを楽しみ、平日の博物館に入り浸り、家で壊れた電化製品を捨てる前に分解するなど、さまざまな探究学習に没頭しました。そのおかげか、8カ月後には学校に復帰、さらに自分の好きなことが見つかり、専門学校と通信制高校で勉強を受け、さらに学びを深めたいと動物の看護大学に進学しました。
3番目の子は、「あのさ、実は私、学校に……」と言った瞬間に、「あ、学校?うん、大丈夫!行かなくても大丈夫!いったん学校のことも、勉強のことも忘れよう!」と次の日から旅に出かけました。子どもが行きたい場所に、子どもが組んだ旅程で旅をし、私はついていくだけ。旅で素晴らしい方々との出会いがあり、2週間ほどの不登校を経て学校に行くようになりました。
私のこんな経験が、ある学校の先生の目に留まり、声をかけていただいて、現在、学校での不登校支援も6年目を迎えています。
同じ頃、口コミで不登校の相談を受けるようになり、私の経験がしんどい思いをしているお母さんの役に立つならということで、2019年に「オカンの駆け込み寺」を開設しました。駆け込んでくるお母さんたちの肩の荷を一緒にかついで、少しでも楽になってほしいと思っています。
もしかすると、いま、学校に行かずにうずくまっているお子さんを前に、すがるような思いで読んでいる方もいるかもしれません。うちの子どもたちがそうだったように、不登校には必ず「出口」があります。そのことだけは、忘れないでください。
これからしばらくの間、隔週火曜日配信で、不登校との向き合い方について連載していきます。次回は5月7日。「学校に行きたくないと言われたら」というテーマでお話しします。