ハーバードの卒業生でもあるヨーヨー・マ氏との出会いは、廣津留さんの音楽人生を変えた(撮影/吉松伸太郎)

 私自身、オーケストラやアンサンブルに所属したのは初めての経験。学生が主体的に運営するスタイルで、演奏についても必ず自分の意見や考えを求められたので、それまで日本でバイオリンの先生の指示に従って演奏してきた身としては、ものすごく新鮮に感じました。音楽を通して、思考力や自分の考えをアウトプットする力がかなり鍛えられましたね。

 また、大学のイベントで演奏したことがきっかけとなって、在学中にチェリストのヨーヨー・マさんと共演することもできました。彼が率いるシルクロード・アンサンブルという楽団はジャンルにとらわれず、音楽を通して自分たちの思いやメッセージ、音楽の背景にあるストーリーを伝え、人の心を動かすような演奏をする。そんな彼らとのコンサートは自分にとって刺激的で、プロとして音楽に向き合う気持ちを後押ししてくれた、忘れられない舞台でした。

Q. テレビでも演奏する姿を見かけます。今年のお正月にテレビの特番で12億円といわれるストラディバリウスで生演奏をしていましたが、どんな弾き心地でしたか?

A. 今年で3年目となる貴重な機会でした。ストラディバリウスも、楽器によってそれぞれ個性があるんですよね。去年のストラディバリウスと今年のものとではまた全然違う。バイオリンは木の中に前の持ち主の魂が宿っている感じがして、それまでの持ち主の弾き方に合わせて音が出るようなところがある。ハリー・ポッターの世界でも「杖が人を選ぶ」って言うじゃないですか。まさにそんな感じなんです。相性みたいなものが確かにあって、今年弾いたストラディバリウスのほうが、弓からするするっと自然にきれいな音が出てくる感覚がしました。

 良いバイオリンは、木がよく鳴るんです。演奏者が余計な力を加えなくても滑らかにきれいな音が出る。ただし、もちろん1万円と2000万円のバイオリンを比べれば音の良し悪しは明らかにありますが、ある程度以上高価なものは音の個性の違いになってくると思います。私は普段、ずっと相棒にしているイタリア製のバイオリンを使っていますが、テレビのお仕事をしていることで、こういう貴重な楽器を弾く機会をいただけてありがたいなと思います。

構成/岩本恵美 衣装協力/BEAMS

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