合作が新たな魅力に
国境を超えた合作も増え、新たなアジア映画の魅力になりつつある。
初夏には日本と台湾の合作が2本公開される。5月3日公開の「青春18×2 君へと続く道」(藤井道人監督)は、台湾の人気スター、シュー・グァンハンと清原果耶がタッグを組み、若く甘酸っぱい恋心を思い起こさせる作品だ。6月14日公開の「オールド・フォックス 11歳の選択」は、ホウ・シャオシェン監督の助監督を務め、台湾ニューシネマの系譜を受け継ぐシャオ・ヤーチュエン監督の最新作。ホウ監督は、次世代の映画人の育成にも力を入れているという。台湾映画の質の高さはそんな技術継承が関係するのかもしれない。
最後に、日本映画も確認しておこう。昨年公開された映画は邦画と洋画合わせて1232本。うち邦画が54.9%を占めた。大阪アジアン映画祭でプログラミング・ディレクターを務める映画評論家の暉峻(てるおか)創三さんは言う。
「アジアでは最初から世界のお客様を見て映画制作をしている国が増えているのに対し、日本は良くも悪くも自国で採算が取れるため、日本しか見えていない印象です」
確かに著名監督で積極的に海外で新作を撮っているのは、カンヌ国際映画祭で「万引き家族」が最高賞を取った是枝裕和監督くらいか。ただ、「PLAN75」(22年公開)の早川千絵監督をはじめ、世界から資金やスタッフを集める新人監督がインディーズ作品から出てきているという。日本映画にも変化は起こっているのだ。
映画配信サービス充実
躍進を続けるアジア映画。いち早く新たな才能をチェックしたい人は、大阪アジアン映画祭や東京フィルメックス、東京国際映画祭といった映画祭がおススメだ。物理的に参加が難しければ、配信サービスもある。
21年6月にローンチした映画配信サービス「JAIHO」は毎日1本作品を配信。運用・編成担当の荻野大輔さんによれば、配信中の100作品のうち82作品(4月15日現在)がアジア映画という。注目のタイ映画は4月時点で23本も見ることができる。
「僕自身この担当になるまでインド映画やタイ映画はほとんど知らなかったので、カルチャーショックを受けました。今後も日本未公開の作品やVHSやDVDしかなかった作品など、ここでしか見られない作品を配信していきます」(荻野さん)
どこか懐かしくて親しみやすいアジアの映画。映画を見ればアジアがもっと近くなる。世界が広がる。みなさんにも素敵な出会いがありますように。(フリーランス記者・坂口さゆり)
※AERA 2024年4月22日号より抜粋