米アカデミー賞や世界3大映画祭で快進撃が続くアジア映画。ここでは、これから日本で公開されるタイ作品、国境を超えた合作などを紹介する。AERA 2024年4月22日号より。
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今、最も注目すべきはタイ映画だろう。昨年、タイではメガヒットが続出。以前は国内の興行収入のほとんどをハリウッド映画が占めていたが、タイ映画の市場占有率が一気に40%になった。
背景のひとつには、タイ政府が映画界の後押しを始めたことがある。韓国のように映画を理解する製作陣や評論家などを迎え入れて国家ソフトパワー戦略委員会を設立。彼らに主導権を与えて、タイ映画の世界進出を図る目標を掲げているという。
タイ映画が初めて日本で一般公開されたのは95年。その映画「ムアンとリット」は19世紀後半の農村を舞台に、女性の人権を訴え続けた女性の半生をまっすぐに描いた社会派史伝ドラマだったが一転、18年に日本で公開された「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」は、高校生のカンニングビジネスをスタイリッシュに描いた犯罪サスペンス。内容も映画のスタイルも変化を感じずにはいられない。
タイでは今後も話題作の公開が続く。6月にはタイ映画の特長のひとつであるフィールグッド・ムービー、「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」が、7月にはもうひとつの潮流であるホラー映画「フンパヨン 呪物に隠れた闇」が公開される。BLドラマでスターになったプーンパット・イアン・サマンとプーウィン・タンサックユーンが共演し、今年の大阪アジアン映画祭で真っ先にチケットが売り切れた。
今後の注目は、モンゴルだ。「シティ・オブ・ウインド」は、シャーマンとして活躍する高校生が主人公。一般公開は未定だが、今年の大阪アジアン映画祭でグランプリに選ばれた。昨年は、第20回ニューヨーク・アジアン・フィルム・フェスティバルのグランプリ受賞作「セールス・ガールの考現学」が、緑と自然のモンゴル映画のイメージを鮮やかに覆すと話題になった。