トモヤ  アメリカで大谷人気が高まっていることを、ディランは日系人としてどう感じているの?

ディラン  いいことだと思う。二つの文化で育った者として、どの文化にも良いところと悪いところがあると感じている。大抵の場合、良いところと悪いところは同じところから来ている。つまり紙一重なんだ。

 多様性に反対の人もいるけど、アメリカ人の多くは、この国が移民によって成り立っていて、それが強みだということを理解していると思う。それでも、「アメリカがナンバーワン」みたいに思い込んでいる部分がある。僕はアメリカの全てが優れているなんて思わない。前にも言ったように、日本には住めないかもしれない。でも、日本の良いところはいっぱいあるし、僕は日本の記者たちに、「そんなにアメリカを崇拝する必要はないぞ」って言いたい。

 大谷の活躍を通して、アメリカが取り入れた方がいい日本文化の優れたところが注目されるのはいいこと。自分たちのやり方以外にも、色々な方法があるんだと気づくから。たとえば、マクドナルドで注文したビッグマックの中身が中心からずれているのを、お店の人がちょっと時間をかけて日本のように真っすぐにしたら、みんながちょっと幸せになる。

 マイケル・ジャクソンの活躍によって、黒人ミュージシャンが様々な賞を獲得したり、最高のミュージシャンだったりすることが当たり前になった。僕はその頃に生まれたから、物心ついた時から、黒人ミュージシャンが活躍しているのが当たり前の中で育った。マイケル・ジャクソンのような卓越した存在というのは、異なる文化に目を向けさせ、その素晴らしさを認識させてくれるんだ。僕の年代は、マイケル・ジョーダンがみんなにとってヒーローだった。そのことが、僕らの世代が、その前の世代よりも人種偏見が少ない理由の一つだと僕は推測している。モンタナ州かどっかの人種偏見の強い家庭で育った子供が、マイケル・ジョーダンが好きすぎて、(黒人である)ジョーダンのようになりたいって思ったかもしれない。その人のようになりたいって思う気持ちは、思考を変える原動力になる。

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野茂、イチロウ、大谷