サム あとは23年6月に本拠地で打った493フィートのホームランもすごかった。大谷のスイングはとにかく力強い。ホームランを狙っているのが明らかなくらい。「当たったらホームランというくらい、できるだけ強くボールを打つ」という思考なんだと思う。

 今年、9回に2点差で負けていて、カウントが3-0になったことがあった。大谷は先頭打者で四球を選んで出塁さえすればいい場面。それでも彼はフルスイングした。

 だからこそ、彼は特別なんだ。500フィートのホームランを打てる可能性があることを分かっているんだろうね。

ディラン  僕が印象に残っているのは、(23年8月3日に)先発した大谷が指の痙攣を起こして交代した本拠地でのシアトル戦かな。ポストシーズン争いから脱落しないように粘っていた時期で、8回には打者としてホームランを打って2点にリードを広げたんだ。そしたらクローザーのカルロス・エステベスが崩れて逆転負けを喫した。ひどい負け方だったのに、いつもと変わらない調子で記者の質問に答えたんだ。

 さっきも言ったけど、彼は気持ちを切り替えるのが抜群にうまい。あとで映像を見たら、ダグアウトで涙を堪えているようにすら見えたのに、その感情を何らかの形で処理して、僕らと話す時には、もう気持ちを切り替えていた。その日の活躍も含めて感心するしかなかったよ。

 僕はいまだに、あれは単なる痙攣じゃなかったと疑っている。ピッチングもいつものような感じではなかったし。本人も何かおかしいと感じていたと思う。それでも、彼は頑張り続ける。それでホームランを打っちゃうんだから。彼の競争心、そして彼がどんな人間なのかを物語っている。

 あとは22年の後半戦に見せた圧倒的なピッチングが印象に残っている。それまでは、ただボールを強く投げている感じに見えていたんだけど、22年の投球を見たら、「今もとんでもないけど、まだまだ成績が良くなる余地があるんだ」と思わされた。