オールジェンダートイレの入り口の表示(本人提供)

 小走りに駆け去っていくオジサンの後ろ姿を見ながら、不思議な思いになる。日本にいると、男女の共有空間では女性が遠慮がちになりがちだ。公共の空間で生理用品が堂々と置かれているのも見たことはない。歌舞伎町のジェンダーレストイレでは、女性からの「化粧がやりにくい」という声があがったというが、ここでは男性からの「女性がいたら遠慮してしまう」の声が大きい。この違いは一体何なのだろう。

 たった数日間の台北滞在だったが驚きの連続だった。最後に台北に来たのは6年前だったが、その時よりもさらに社会の風通しがぐんと良くなっているのを肌で感じる。夜にレズビアンの友人たちと食事をしたときも、同性婚法制化後に女性と結婚した友人もいれば、「結婚はしたくない」と非婚を貫くレズビアンもいる。私たちは平等で対等な存在。でも一人一人は違う。違うことの自由、違うことの尊さを民主主義というのだろうなぁ……なんてことを思いながら、あまりにも先を歩んでいる台湾を眩しい思いで眺めてしまう。

 生殖器に見立てた滑り台など、日本だったら性犯罪に使われかねないのではないか。オールジェンダートイレでは性犯罪が防止できないのではないか。そんな不安がどうしたって先だってしまう国に、私たちは住んでいる。そしてそれは女性の話だけではなく、今回の地震で改めて、私たちの国が、「政治を信頼し安全に生きていく」にはあまりにも遠いところに来てしまっていることを突きつけられるのだ。日本は、命や人権に、とても鈍い国になっている。

 台湾の地震で亡くなった方々の冥福を祈ります。

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