ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの連載「今週のお務め」。31回目のテーマは「『待ちたい』中森明菜」について。
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来月でデビュー42周年を迎える中森明菜さん。先週、公式YouTubeチャンネルで公開された「TATTOO」のセルフカバー映像が、早くも300万回再生超えという「大バズり」を見せています。「中森明菜」の4文字と「バズる」という若者言葉を並べて書いていると、あたかも「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の世界にでもいるような感覚に陥ります。
2017年のクリスマスディナーショー以来、表立った活動は休止状態にあった明菜さんですが、ここ数年の凄まじい「中森明菜待望論ブーム」の中、一昨年の夏に突如Twitter(現・X)アカウントを開設し、ファンへ向けた「手紙」をポストしました。
そこには、「ゆっくりになってしまうと思いますが、歩き出していきたいと思いますので、どうか見守っていただけると嬉しいです。」とありました。「ゆっくり……」「見守る……」という、どこか弱気な心情を敢えて吐露した時の明菜さんというのは、すでにかなりエンジンをふかしている状態であると、長年明菜を消費してきた私としては思うわけです。だからと言って、「早く! 早く!」と急かすような無粋なことは絶対にしません。本人が「見守って」と言っているのですから、見守るだけです。「見守る」ことにかけては、往年の明菜ファンは年季が入っていますから。
42年間の1/4以上は、「見守る」「待つ」「案ずる」。これが真の中森明菜ファンのスタンスです。案じて待つ間に、私たちファンは明菜さんの音楽を自分たちの中で、幾度となく反芻し、熟成させ、生まれ変わらせる、そんな能力すら気付けば身につけていました。