AERAの将棋連載「棋承転結」では、当代を代表する人気棋士らが月替わりで登場します。毎回一つのテーマについて語ってもらい、棋士たちの発想の秘密や思考法のヒントを探ります。36人目は番外編で、コンピュータ将棋開発者・杉村達也さんです。AERA 2024年4月8日号に掲載したインタビューのテーマは「影響を受けた人」。
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杉村達也はシステムエンジニアだった父の影響で、小さな頃からプログラミングに慣れ親しんでいた。ゲームも大好きだった。
「ボードゲームだと、将棋と麻雀は幼稚園の頃、祖父から教わりました。これまででいちばんやってきたジャンルは『beatmania』(ビートマニア)などの『音ゲー』です」
1998年、音楽ゲーム「BM98」の開発者・磯崎元洋(やねうらお)は優れたファイルフォーマット「BMS」を考案する。杉村はこのシステムに感銘を受けた。
「『こういうふうに譜面と音楽ファイルとを合わせれば管理しやすいよね』っていう仕組み作りがすごいんです。やねさんは『こういう仕組みにしたら、たくさん人が寄ってくる』というシステム作りがうまいんです」
2000年代、コンピュータ将棋は飛躍的な進化を遂げた。
「かつては将棋が強い人が『こういうふうに指してほしいな』と、手打ちみたいな形でしかコンピュータ将棋を強くできない時代がありました。ところが05年にBonanza(ボナンザ)という強いソフトが出てきまして。開発をされた保木邦仁さん(当時トロント大学研究員、現電気通信大学准教授)は、将棋はほとんど初心者レベルとうかがっています。保木さんはコンピュータにたくさんのデータを勉強させる『機械学習』の仕組みを、将棋にうまく応用させた。そうするとあとは、開発者自身が将棋は強くなくても、勉強させる局面自体が強ければいいんです」
保木が自身のアイデアを惜しみなく公開したことも、全体の発展へとつながった。
「オープンソースになれば、集合知的にいろんな人が工夫を持ち寄って、自分ひとりで作るよりも、どんどんよくなっていくんですね」