AERA 2024年4月8日号より

給食で主食とデザート、混ぜないでと交渉重ね

 都内在住の女子児童は特別支援学校に通う4年生(調査実施当時)だ。疾患が未診断で、嚥下障害や上肢・体幹機能障害、知的障害がある。吸引や経管栄養などの医療的ケアがあり、学校で行われるケアの詳細に関して、母親は粘り強く交渉を続けてきた。「支援法が追い風になった部分もあるが、まだまだ変わるスピードが遅すぎる」と感じている。

 例えば給食は、女子児童の場合、食事をペースト状にしたものを、胃ろうからシリンジで注入する。医療的ケア児支援法ができて可能になったことの一つだ。ただ、メインもデザートも全部混ぜて注入する、というルールのため、デザートは一緒にしないでほしいと母親は学校に伝えていた。

「だって、しょうゆラーメンと果物ゼリーを混ぜて入れられるのは嫌じゃないですか? 私は嫌です。本人が嫌だと言えない子の場合、親が自分を基準に判断するしかないんです」(母親)

 口から食べられる子の場合は一皿ずつ一口ずつサポートしてもらえるのに、なぜ注入の場合だけ一皿ずつはダメなのか、それで食育と言えるのか、など交渉を続けた結果、やっとデザートだけは分けてもらえるようになった。

「でも、同時に見直してほしかったことは他にも様々あります。少しずつやりましょう、と言われますが、なぜ少しずつにする必要があるんでしょうか。少しずつやっていたら、この子、卒業しちゃいます」(同)

 どんな分野でもスピード感をもって取り組むのに越したことはないが、特に子どもにかかわる分野では「少しでも早くサービスが充実すること、利用するための壁が取り払われることが大事」と指摘するのは、調査メンバーである国際医療福祉大学大学院講師の村山志保さん。

「子どもにとっては、今この時にサービスが受けられる、体験ができる、学習ができる、ということが大切です。そのタイミングを逃してしまうことが、成長や発達にかかわる大事な時期を逃してしまうことになるからです」

(ライター・高橋有紀)

AERA 2024年4月8日号より抜粋