子どもたちの生活には医療、教育、福祉の三つの領域でのサポートが欠かせない(写真:Ohana kids提供)

 2021年9月に「医療的ケア児支援法」が施行されてから、2年半が経った。医療的ケアが必要な子どもとその家族の生活に、変化はあったのか。AERA 2024年4月8日号より。

【図表】医療的ケア児支援法施行後の生活の変化の実態調査結果はこちら

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「区内には医療的ケア児を預かる保育園は5園(1枠ずつ)しかありません。しかもどれも家から遠いんです」

 そう話すのは東京都世田谷区に住む30代の保護者。息子は現在1歳だが、生まれてすぐ心臓の手術を行った後、ミルクの飲みが良くなかったことから、鼻からチューブを通し経管栄養を行っている。

 医療的ケア児とは、人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な児童のことをいう。医学の進歩を背景に、在宅の医療的ケア児(0~19歳)の数は年々増加傾向にあり、2019年には2万人を超えた(推計値)。

 冒頭の1歳の子の場合、保育園で必要なケアは日中に1回、その管からの注入を行うだけ。在宅勤務である両親が保育園に出向いてケアをするから、通常の保育園に通わせてもらえないかと交渉をしている。

「医ケア児と一括りにされますが、子どもによって千差万別です。人工呼吸器が必要な子や、高頻度の処置が必要な子もいる中で、うちの子は経管栄養の管だけ。こういう軽い医ケア児が5枠のひとつを使ってしまうのは心苦しい、と思ってしまうんです」

「医療的ケア児」という言葉が初めて法律に明記されたのは、16年に成立した改正児童福祉法においてだった。21年には「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が成立・施行され、児童福祉法で「努力義務」とされていた各自治体による医療的ケア児への支援が、「責務」となった。

「法律ができた後の生活の変化、お子さんやご家族が思い描いている状況に少しでも近づいたかどうかという点に興味があり、医療的ケア児の保護者の方に実態調査を行いました」

 と話すのはNPO法人オハナキッズ代表の友岡宏江さん。同法人は世田谷区で児童発達支援・放課後等デイサービスを運営している。

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