昨年12月のGPファイナルでは、高難度ジャンプで圧倒したイリア・マリニン(アメリカ)が優勝、宇野は2位だった。マリニンの台頭を目の当たりにした宇野は、世界選手権(3月)に向け、ジャンプも強化してきた。

 4位という結果だった世界選手権でも、宇野の挑戦がショートでは成功し、フリーでは実らなかったといえるかもしれない。ショートではジャンプをすべて決め、今季世界最高得点で首位発進。しかし、フリーでは冒頭の4回転ループで転倒、続く4回転フリップでも着氷で手をつき、その後もジャンプの乱れがあった。

 ただ、終盤のコレオシークエンスには、宇野のスケートにしかない美しさがあった。もう頂点には届かないことを知っていたと思われる宇野は、しかし渾身の滑りをみせた。考え抜いて選んだ表現を極めるという道を最後まで進もうとする宇野の姿が、そこにはあった。

 フリーを滑り終えた宇野は、清々しい笑みをこぼした。

「フリーは、自分の演技としましては、あまり振り返っても感傷に浸れるような演技にはなりませんでしたけれども、それでも本当に今は清々しい気持ちでいっぱいです」

 新時代の到来を予感させた今季、宇野は自らのスケートを磨き、そして戦い抜いた。(文・沢田聡子)

沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」
 

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