東大をはじめとする難関国立大の推薦合格発表が終わり、一般入試の合格発表も終わった。ひと昔前は、こうした難関国立大に一般入試以外で行くことは考えられないことであった。ところが、東北大、筑波大、九州大が2000年度入試で初めて総合型選抜を開始したことが転機のきっかけだ。
当時は「AO入試」とも呼ばれており、主に書類審査と面接で合格が決まる入試形態に賛否両論を呼んだ。その後、センター試験や共通テスト、英検やTOEICなどの民間資格試験の結果など、学力面も重視されるようになり、名称も「総合型選抜」という呼称が一般的になっている。
今では東大をはじめ約8割の国立大が総合型選抜、学校推薦型選抜を実施している。00年に他大学に先んじて始めた東北大などでは積極的に取り入れる動きが進んでおり、東北大では今や募集人員の31.4%を占める(AO入試と後期日程を足した数字)。実に約3人に1人が総合型選抜で入学している実態になっている。
東北大では大野英男総長が昨年、「全て総合型選抜へ移行したい」と表明しているなど、その意気込みは高い。理由は、入学後の学力の高さだ。15年に東北大が出した資料によると、修業年限でストレートに卒業した学生は、一般入試前期日程80.1%、後期日程71.1%に対し、AOⅡ期入試は84.1%、AOⅢ期入試は81.8%と高い。成績評価を示すGPAも一般入試の学生よりも高い傾向にある。
5倍から6倍に伸ばした国立大も
東北大以外の大学でも、こうした経緯から総合型選抜の合格者を増やす動きがこの10年近くで進んでいる。総合型選抜は定員いっぱいまで合格者を出さないこともあるため、合格者同士で比較すると見てとれる。東大が推薦入試を始めた16年度入試と24年度入試を比較しても、北大は28人から96人、一橋大は5人から31人、大阪大は56人から295人と、合格者を約5倍から6倍に伸ばした難関国立大もある。
総合型選抜を始める代わりに後期日程入試を廃止する大学・学部も多い。しかし一部には後期入試も残されており、受験生にとっては、難関国立大でも総合型選抜と前期、後期入試の3回チャンスがあることになる。総合型選抜に落ちて、前期入試で挽回して合格する生徒も少なくない。総合型選抜は学力に自信がない生徒が“逃げ”で受験するものではなく、学力のある生徒が受験機会を増やすために積極的にチャレンジしている様子がうかがえる。(ライター/河嶌太郎)
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