ニュース沙汰になるような重大な詐欺師でなくても、この社会には善良な人たちの心の動きを利用して、「ズル賢く立ち回りたい人」がごまんと存在する。
「見えないゴリラ実験」(2004年イグ・ノーベル心理学賞受賞)で一躍有名になった心理学者、ダニエル・シモンズとクリストファー・チャブリスの2人は、明らかに犯罪とはいえなくても、現代の企業の多くは「欺瞞的な手法」を標準的なビジネスとして採用しており、もはや合法と非合法の境界があいまいになっているという。望むと望まざるとにかかわらず、自分を守るために「ズルい人の手口」と「認知のしくみ」を学んでおかないと、生きにくい世界だということだ。
シモンズとチャブリスの最新刊『全員“カモ”』の冒頭で解説を寄せた作家の橘玲氏が、自身の経験をまじえながら、「フェイクが横行する時代」を生き抜くシンプルな対策を提示する。
自分は絶対だまされないと思っているなら、かなり危険
ワイドショーでたまたま見かけた特殊詐欺のニュースに「なんでこんな手口に引っかかるのか」と嗤(わら)い、自分は絶対だまされないと思っているのなら、あなたはかなり危険な立場にいる。なぜなら、誰もがいつかどこかでだまされることになるし、自信があるひとほどヒドいことになるからだ。
『全員“カモ”』の著者である心理学者のダニエル・シモンズとクリストファー・チャブリスは、「見えないゴリラ実験」(2004年イグ・ノーベル心理学賞受賞)で、「全員“カモ”」になる理由を示した。