コウ:いやいやいや(照)。恥ずかしいですけど、そう言ってもらえて本当にうれしいです。

松下:トンテキ、オムライス、それからヤムウンセンもコウさんのレシピで作れるようになりました。ちっちゃい台所で本を開いていたので、油がはねたり、醤油や調味料が沁み込んだり。今、僕の家の台所にはいくつかの料理本がありますが、コウさんの『“僕流”家ごはん』が一番汚れています(笑)。

コウ:おお! それは一番うれしい使われ方です。ありがとうございます。

松下:料理を始めた頃の僕は、俳優を始めたばかりで悩むことも多かったんです。でも、家に帰って、コウさんの本を見ながら、いろいろ作っていると「ああ、楽しいな」と思ったことをよく覚えています。何も考えずに無心で切ったり、炒めたりする行為が面白くてはまりました。僕にとって、大事な時間のひとつでした。

コウ:料理の持つ力のひとつですね。料理をしている瞬間って、自分と食材だけの世界になるじゃないですか。家に帰ってきて、おなかが空いたから料理をする。その時に、他のことはあまり入ってこないんですよ。

松下:そうなんです! 普段考えていることや悩ましいことなどを、その瞬間は考えなくなって、フラットな自分になれます。

コウ:僕は職業柄、ミュージシャンや芸人さんや俳優さんなど、様々な方と一緒に料理をさせてもらうことが多いのですが、興味深いのが「はい、料理をお願いします」と言われると、どんな方も顔が素になることです。皆さん、背負っているものがあるじゃないですか。でも、料理が始まると、肩書やイメージは全部なくなって、素のご本人なんです。

松下:テレビでは見せない顔が見えるんですね。順序だててやる人、黙々とやる人など、性格も出そうですね。

コウ:そうなんです。面白いですよ。すごく繊細に見えて、意外に大胆に料理をされる方もいらっしゃって。

松下:1人暮らし歴が長くなってきたので、自分でいろいろ作れるようになりましたけど、今も時々コウさんのYouTubeチャンネル「Koh Kentetsu Kitchen」をiPhoneで観ながら料理をしています。特に、手軽に作れる副菜のレシピは本当に美味しくて、重宝させてもらっています。台所に立っている時間は癒やしであり、救いであることに変わりはありません。

コウ:料理とすごく素敵な向き合い方をされていると思います。そして、僕のレシピを見てくれていることが本当にうれしいです。ありがとうございます。一緒にチャンネルを作ってくれているスタッフにも伝えたいと思います。

AERA 2024年4月1日号

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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