以上が原価計算の基本的な考え方ですが、もう少し会社が大きくなると、製品の種類も多くなり、例えば直接製造に携わる部門が2つで、生産管理を行う1つの部門が直接製造に携わる2つの製造部門を共通して管理している場合などはどうすべきでしょうか。
この場合、生産管理に携わっている部門で働く人の給料は、どのように製品に配賦すればよいのかという問題が出てきます。彼らの給料も製品の製造に間接的に必要な費用であるため、最終的には各製品に配賦されなければなりません。
ここでも、製造時間を使って配賦するということが一つの方法として考えられます。その前提として生産管理部門にかかった費用を集計する必要があります。これが「部門別原価計算」です。
ただ、生産管理部門の費用を製品に配賦するだけなら、「部門別原価計算」などと難しいことを言わなくても、「間接費」と考えればよいのではないかという疑問が生じます。なぜ「部門別原価計算」などと難しい概念を持ち出す必要があるのでしょうか。
例えば、生産管理部門の中に生産計画部門と設備管理部門があり、これら2つの部門にシステムサービスを提供している1つのシステム部門があったとします。この場合、原価計算をより精緻に行おうとすると、システム部門がこの2つの部門にサービスを提供していることを計算上も反映させる必要があります。
つまり、システム部門の費用をこの2つの部門に配賦してから、これら2つの部門の費用を製品に配賦するという2段階の配賦を考える必要があるのです。これが「部門別原価計算」なのです。
そして、直接費は直接各製品の原価に紐付けられ、間接費は部門別原価計算で集計された費用も含めて「製造間接費」というグループ費目に集約され、何らかの配賦基準に従って各製品の原価に紐付けられるのです。
以上が原価計算の全体像です。結局、原価計算とは、製造に直接・間接に関わった費用をいかに製品に紐付け、売上原価をできるだけ合理的に計算するかという目的に沿った計算作業なのです。このことを常に意識していれば、原価計算の議論を見失うことはないと思います。