特筆すべきは、23年にEV販売補助金を廃止したことだ。所得税減税措置はまだ残るが28年にはゼロになる予定だ。
中国車への信頼は海外でも急上昇し、欧州、中東、東南アジアを中心に輸出が伸びた。23年には、ついに日本を抜いて世界最大の輸出国になり、輸出の新エネ車比率も24.5%に達している。
ちなみに、最近、中国ではEVの新車が大量に捨てられているというようなニュースを目にするが、それは事実だ。
中国の競争は激烈で、23年までに自動車メーカーの数は487社から40社へと激減した。潰れた会社のEVが放置されるということが起きているのだ。今後もさらに20社ないし30社くらいが淘汰されると見られている
今後は、大都市だけでなく、低所得人口支援政策(中国政府の最大の政策目標の一つである)の一環として農村でのEV普及が進められるはずだ。公共交通機関の全面EV化(寒冷地を除く)も進む。さらに、自動運転を認める地域をさらに広げ、完全自動運転に近いレベル4にもっていく政策もまた加速されるだろう。
輸出も東南アジアと中東を中心に拡大する。タイなどでの生産も始まった。中国にはEV利用のデータが世界一豊富にある。これによりEVや自動運転などに関連する新たなサービスを生み出す競争で中国企業が圧倒的に有利になる。また、さまざまな国際標準をとりにいく上でも強みになるはずだ。
一方、アメリカでは政治的理由によりEV化のスピードが落ちる可能性が高い。中国も経済不振によりEV化が減速するかもしれない。欧州は中国製EVの輸入関税を引き上げる可能性がある。これらの流れを見て、EV化には逆風が吹き始めたと囃し立てる向きもある。
EV化で中国勢にどんどん引き離されるテスラ以外の日米欧のメーカーは焦っているため、世界的なEV化減速を待望しているかもしれない。
だが、少なくとも、中国では、EV化の流れは止まらない。国家安全保障政策の一環だから、これを止めることはあり得ないのだ。
日本がEV化の減速を喜び、少しでもEV化への努力を怠れば、将来に大きな禍根を残すだろう。自動車産業だけでなく、エネルギー産業も含めて中国に後れをとり、国家安全保障の面でも大きな過ちを犯したと後悔する日が来るだろうという警鐘を鳴らしておきたい。