禰豆子と炭治郎(画像はコミックス「鬼滅の刃」23巻のカバー)(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

優しすぎる兄・炭治郎の欠点

 炭治郎は優しい人柄のために、命のやりとりの重要な局面でためらい、決断できないことが多々ありました。炭治郎の師である鱗滝左近次(うろこだき・さこんじ)から、「妹が人を喰った時 お前はどうする」と問われて、答えられず、「判断が遅い」と頬を打たれる場面があります。

 鬼には知性があり、人間に擬態することが可能で、同情を誘うような言葉をささやいたり、だまし討ちすることすらあります。炭治郎の「判断の遅さ」は、人間としての美徳ではあるものの、鬼殺隊の剣士としては致命的な欠点でした。兄弟子である水柱・冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)にも叱られることがありましたが、炭治郎は自分が戦わねばならない理由こそ理解できているものの、誰かの生命を絶つこと、人々を救う際の優先順位をなかなか決定できません。

炭治郎におとずれた2度の転換期

 そんな炭治郎には、これまでに2度の転換期がありました。

 まず、鬼の妹を連れていることで断罪され、「柱合裁判」(=鬼殺隊実力者「柱」で行われる裁判)の場に連れ出された時のことです。炭治郎と禰豆子のために、2人の剣士が命をかけて助命を嘆願します。

「もしも禰豆子が人に襲いかかった場合は 竈門炭治郎及び――…鱗滝左近次 冨岡義勇が 腹を切ってお詫びいたします」(6巻・第46話「お館様」)

 他人のために、鬼殺隊の戦力・育成の要である柱と元柱がその覚悟と慈愛を見せたことで、炭治郎は自分の甘さ、そして他者の生命の尊さをあらためて知りました。

 さらに、この後、炭治郎は大切な人物との別れを経験します。自分たち後輩剣士と、一般市民を守って果てた、炎柱・煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)の死です。

「命をかけて鬼と戦い 人を守る者は 誰が何と言おうと鬼殺隊の一員だ」(煉獄杏寿郎/8巻・第66話「黎明に散る」)

 鬼殺隊の剣士としてのあり方、そして柱とはどういう存在であらねばならないのか、ということを炭治郎は、煉獄の死を通して学びました。

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禰豆子の意志に寄り添う覚悟