若葉:僕は荒木さんってだいぶ変な方だなと思いましたよ。
荒木:ええ?!
若葉:東大のご出身なんですよね。勉強しすぎて壊れちゃったのかな、この人?って(笑)。
肉体的しんどさあった
なぜ同じ日を繰り返すのか、どうしたらループから逃れられるのか。謎も多く、その世界観は一筋縄ではいかない。そしてループを繰り返すうち、岩森と溝口に奇妙な協同関係が生まれていく様はユーモラスでもある。
若葉:僕もいまだにわかっていない部分もあります。ただ知っておくべき謎と聞かないままでおく部分の線引きをしていました。岩森としては知らなくても、僕が知って演じないと勘のいい人は気づいてネタバレになってしまうかも、とか、感情の込めかたなどを監督と確認しながら演じました。そういう意味で一番のびのびとやっていたのは溝口役の伊勢谷さんだと思います。
荒木:あっはっは。
若葉:伊勢谷さんが「本番!」って言われて「え? どうしたらいいの?」って演じたシーンは全部おもしろかったですから。
荒木:伊勢谷さんは撮影中に「あの、マジでこれ、何やってるんですか?」みたいなこと言うんですよ。何もわからないまま、何度も何度も殺されて。
若葉:僕は役を引きずったりしないので岩森役に精神的なつらさはなかったけれど、肉体的なしんどさはありました。伊勢谷さんに「本気で抵抗してもらえますか」ってお願いしたんです。でないと俺が本気でできないから。そうしたらとんでもない力なんですよ、お互いに。
荒木:なんだかわからないけど、なにかが起きてるぞ?というおもしろさは撮れたと思う。それが観る人にどれくらい伝わってくれるかはわからないんですが。
荒木監督は前作「人数の町」(20年)で架空の町を舞台に現代社会の問題を映し出した。本作にも犯罪被害者の人権問題など、現実社会の課題が映る。