阿古真理(あこ・まり)/くらし文化研究所主宰。作家・生活史研究家。食を中心に暮らし全般および女性の生き方の歴史と今、写真をテーマに、ウェブメディア、書籍その他でルポや論考、エッセイを執筆。講演、テレビ・ラジオへの出演多数。2023年、『家事は大変って気づきましたか?』(亜紀書房)などの執筆活動で第7回食生活ジャーナリスト大賞(ジャーナリズム部門)を受賞。ほかに著書多数 (photo 平岡 明博)

 ――刷り込みから自由になって、なかなか難しいですけれど、日々、小さなことを積み重ねていくことで、見えてくるものがきっとありますよね。

 必ずあります。あまり頑張っていない、完璧ではない家事仲間がいるとさらにいいですよね。同僚と、家事の話をすることはありますか?

 ――あります。「今日はカレーで、今週はもう一回カレーです」とか、「炭水化物と野菜と肉でできている餃子は完全食だと近所のおばあちゃんに言われて以来、こまったら餃子です」とか。

 餃子は手作りしてるんですか?それ、結構大変だと思うんですけど。

 ――作るか買ってくるかは別にして、「餃子でいいんだ」って思えたことで、すごく気持ちが楽になったということみたいです。

 そう、もっと楽でいいんだよっていう話をしたほうがいいと思います。特に、お母さんになった後が結構大変。専業主婦が一般的だったころの「理想像」は若い人の間では薄れつつあって、いい傾向だと思うんですけれど、親の理想像というのは結構強固に残っていますし、周囲が刷り込んできます。完璧な母も完璧な父も無理ですよ。ひとり暮らしの人も、家の中がパーフェクトな自分を目指す必要はない、ということですよね。

 ――誰だって完璧なはずはないんですけれど、つい目指そうとしてしまうんですよね。目指さなくていい、というメッセージと共に、春からひとり暮らしをするという方に伝えたいことはありますか。

お金、衣食住、防犯が全てわかる 今さら聞けない ひとり暮らしの超基本』の中で思いを込めたところでいうと、「ひとり暮らし」って自由な時間なので、楽しんでほしいということです。やらなきゃいけないことも増えるけれど、怒る人もいないんですよ。短期間であればわざと自堕落な生活をしてみるとか、家族と住んでいたときには飾れなかったアートを飾ってみるとか。自由をエンジョイしながら、スキルを上げていってください。

(構成 生活・文化編集部 永井優希)