自民党の裏金問題に対して、「なぜ脱税で逮捕されないのか」などと国民の不満の声が上がっている。確かに、一般の国民であれば追徴課税、悪質な場合は逮捕もあり得る案件だが、なぜ国会議員は罰せられず、逮捕もされないのか。元国税局調査官の大村大次郎さんは「国税局は税務調査の権限があるのに、それを使っていない」と指摘する。その実態を聞いた。
――自民党の裏金問題をどうみていましたか。
課税されるべき案件だとみていました。派閥からキックバックされたお金について、多くの自民党の国会議員が「使用していなかった」と答えていました。使われずに残ったお金は雑所得となります。雑所得は課税対象です。それにもかかわらず、納税していません。
また、政治活動に使ったお金は非課税となりますが、本当に政治活動に使ったのか、調べる必要があると思います。私的なものにお金を使っていれば個人所得であり、課税の対象になります。
政治家には昔からアンタッチャブル
――なぜ国税局は税務調査に入らないのでしょうか。
単に政治家に遠慮しているだけです。「調査をしたらこうなる」というような具体的な圧力や危害があるわけではありません。ただ、国会議員は権力を持っています。調査をすれば自分が不利益を被る可能性が考えられます。捜査するとなれば、当然、上の承認が必要になってきます。事案によって変わりますが、政治家の存在というものが当然あります。
官僚にとっては最終的なボスは政治家です。さらに言えば、政治家という存在が昔からアンタッチャブル(触れてはいけない存在)だからでしょう。政治家に対しては税務調査をしてこなかったし、しないという認識があるのだと思います。