――国会議員には調査されない「特権」があるようにも見えます。
特権があるわけではありません。ただ、実態として調査しない、かかわらないようにしているだけです。国税局は税務調査の権限を持っています。その権限を使っていないのです。政治家の会計については「たたけばほこりが出る」と言われています。特に今回の裏金問題は驚くほどずさんなものです。お金の出入りを管理するという会計の考えを完全に無視したものです。
一般の企業であれば、1円も不明なおカネが許されないという世界です。それは税務調査があるからです。結局、ずさんな会計でも許されると政治家が思ってしまっている実態があり、国税局の姿勢が政治家のゆるみにつながっていると見ています。
――連座制など制度改革の議論が進んでいますが、どう見ていますか。
連座制の議論もいいですが、その前にいまやれることがいくらでもあるはずです。先ほども指摘したように、国税局には税務調査する権限があります。アンタッチャブルな存在として触らないだけで、政治家に対して税務調査する権限があるのです。国税局はその権利を使って、企業に調査するのと同様に、政治団体に調査をすればいいのです。
政治団体にも税務調査を
一般の企業では4、5年に1回程度は、疑わしいことがなくても税務調査が入ります。政治団体にも例外なく、税務調査に行けばいいんです。国税局は調査をする権利も義務もあるということを、国民はもっと知っておくべきだと思います。
「政治団体は法人税が非課税なので税務調査ができない」と言われることもありますが、政治家の所得には所得税が課せられています。そのため、所得税の調査はできます。政治団体から政治家が受け取った金についても、所得税の調査で普通に調べることができるのです。
――税務調査をしない国税局に対して、国民の不満の声も上がっています。
SNSでは「確定申告ボイコット」という言葉がトレンドに入っていました。納税者から見れば「やってられない」という気持ちが生じるのは当然ですね。マスコミもこの問題をもっと追及するべきです。国税庁は確定申告などを通じて国民と接する機会が多く、他の省庁と比べ、国民の声には敏感です。国民の批判の声が大きくなれば、国税局も重い腰をあげやすくなってくると思います。