自民党大会を前に森喜朗元首相(左)と話す岸田文雄首相=2024年3月17日、東京都港区

 過去には自民党元幹事長の加藤紘一氏や、元副総裁の金丸信氏に対し、国税局が重い腰をあげたことがあります。ただ、加藤氏の場合は、加藤の乱のあと、政治的な権力を失ってから脱税容疑で国税局の調査が入り、金丸氏については闇献金問題で世論の批判を受けて国会議員を辞めてから検察が動いています。

――政治家が政治団体に寄付する形で相続税を逃れているといった批判が出ています。

 事実上の相続だったとしても、法律上、政治団体に寄付したとすれば、自分の資産を子どもに相続税を払わずに相続させることができます。政治団体が法律の抜け穴になっています。また、選挙区、後援会といった「地盤」を引き継ぐときにも相続税がかかっていません。

 相続税法では金銭的な価値があるものはすべて相続税の対象となります。地盤にはその国会議員に対する支持=票があります。国会議員になるには、数十億円単位のお金が必要になると言われており、地盤に金銭的な価値があるのは明らかです。

相続税がかからないことが世襲議員増加の原因にも

 例えば会社を相続した場合、会社の信用力も引き継ぐことになります。信用力は株価に入っていると考えられ、相続税がかかります。会社の信用力と政治家の支持は同じように考えられます。世襲政治家も地盤を引き継ぐ場合は、相続税を払うべきです。

 国会議員には相続税がかからないという問題が、世襲議員の増加をもたらしたと私は見ています。新たに政治家になろうとしても莫大(ばくだい)なおカネがかかるため、新しい政治家が入ってくることができないのです。

 実は、現行の憲法下で戦後から平成になるまでに就任した首相15人のうち、世襲政治家は鳩山一郎氏だけと言われています。しかし、平成以降に首相となった19人のうち11人が世襲政治家です。「失われた30年」と言われていますが、世襲議員の増加と日本の衰退はリンクしていると見ています。

――実態として相続されているのであれば、政治家から相続税を取ることはできないのでしょうか。

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相続税優遇制度を廃止する必要がある