2月に行われた杉原氏(左)らの防衛省交渉の様子の一場面(画像/Choose Life Project提供動画からの切り出し)

 防衛省は攻撃用ドローンの導入に向けて候補機を選定中だが、7機ある候補機のうち5機がイスラエル製であることがわかった。専門家は「虐殺への加担」と指摘する。AERA 2024年3月25日号より。

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「どの国の無人攻撃機かと防衛省に問いただすと、次々にイスラエルの軍事企業名が出てきたので驚きました。イスラエル製に偏重しているのは明らかです」

 2月下旬に防衛省と交渉を行った武器取引反対ネットワーク代表の杉原浩司氏はそう話す。

 防衛省は2年前の12月に決定した安保三文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)に沿って、無人攻撃機(ドローン)の導入を決めた。弾頭を積み、標的に突っ込んで自爆する殺戮(さつりく)兵器だ。

 今年度99億円をかけて運用実証を開始したが、7機ある候補機のうち5機がイスラエル製であることが杉原氏らの防衛省交渉で明らかになった。イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(IAI)、エルビット・システムズ、Uビジョンの3社だ。今年度は運用実証を進め、候補機の中から絞り込んで来年度以降、本格導入する。

落札価格1円の機種も

 3月12日に開かれた参議院外交防衛委員会で共産党の山添拓議員がこの問題を取り上げると、うち2機種は落札価格が1円だったこともわかった。

 イスラエルは「中東のシリコンバレー」と呼ばれ、多国籍企業の研究開発拠点が集積する。そんなイスラエルが開発した無人攻撃機の評価はどうなのか。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏が説明する。

「他の軍事大国と比べて特段、技術力が優れているわけではありませんが、無人攻撃機なら自立で徘徊(はいかい)飛行をしながら敵のレーダーに自爆攻撃を仕掛ける機能を持ったものが有名です。イスラエルは国防軍と軍事産業が密接に関係し、優秀なハイテク技術者も多いことから電子戦やサイバー戦の分野に強い。武器やその技術を応用した製品の輸出も盛んで、飛行中のドローンを無効化する装置は日本の警察が導入しています」

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