徳田は同志社大学に進学後、2年のときに三段に昇段。難関のリーグで戦い始めた。そこでもまた苦戦した。
「昇級にからんでない期がほとんどで。最終日、上がり目がないのに東京に遠征にいくときはしんどかったです」
年齢制限の26歳は次第に迫りつつあった。
「就活した方がいいかなと思った時もありましたが、そっちも手遅れだなと。なんとかなるかと思い、将棋に打ち込みました」
地元山口県でのタイトル戦の対局は、記録係を務めた。
「タイトル戦で10回以上記録を取ったら(歴が長いのでなかなか)棋士になれないというジンクスがあって気にはしてたんですけど(笑)。地元の方々にはお世話になっているので、地元での対局はやろうと思ってやってたんです」
2018年12月、下関での竜王戦第7局は、羽生善治竜王(当時)のタイトル通算100期がかかっていた。
「記録を取っていて緊張するってなかなかないんですけど、本当にもう、すごい将棋だったので、緊張しました」
2021年11月、宇部での竜王戦第4局。記録係の徳田三段は藤井三冠が目の前で竜王位を獲得するのを見ていた。それがいい転機となり、さらに研究に励んだ。8期目となる21年後期のリーグ。ついに昇級のチャンスを迎えた。
「最終日の直前ぐらいまでは、ずっと他力(3番手以下)だったので。『なにも考えずに上についていこう』という感じで淡々とやってたのがよかったのかもしれません。気づいたら自力になっていて」
2022年。徳田はついに四段昇段を果たした。山口県初のプロ棋士誕生に、地元のファンは沸き返った。(構成/ライター・松本博文)
※AERA 2024年3月18日号