スプリングトレーニングに参加するロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平=2024年2月19日、米・アリゾナ州フェニックス(写真:AP/アフロ)

期待とプレッシャー

 右ひじを手術した大谷は、今季は打者としての出場に限られる。調整は順調で、3月20、21日に韓国で行われるサンディエゴ・パドレスとの開幕シリーズには間に合うペースだと本人は語った。キャンプの打撃練習では、これまでと変わらぬ特大の柵越えを連発してファンや記者を沸かせている。ただし、ワールドシリーズ優勝が至上命題とされるドジャースにとっては、大谷に一日でも早く戻ってきてほしいというよりは、ケガなくポストシーズンで力を発揮してほしいという気持ちの方が強いはずだ。打者に専念ということで、これまで以上の打撃成績を期待する声もあるが、簡単なことではない。投手としてのリハビリをしながらのシーズンになるので、完全に打撃だけに集中できるわけではない。新チームに入ったことで、見たことのない投手との対戦も増える。そもそも、メジャーNo.1とも言われた昨年の打撃成績を上回るのは容易ではない。

 加えて、ドジャースファンはエンゼルスファンに比べると熱量が高く、結果を出せない選手への風当たりは厳しい。ここ2年はポストシーズンで残念な結果に終わっていることで、7億ドルをかけて獲得した大谷にかけるファンの期待はすさまじい。

 それでも筆者は、大きなケガさえなければ、今季の大谷が期待を上回る活躍をする可能性の方が高いと予想している。というのも、メジャーに来てからの6年間で、新しい環境への適応力とプレッシャーに負けない精神力を証明してきたからだ。

 多くの日本人選手が苦戦する環境の違いをものともせず、メジャー初年度には世界最高峰の舞台で二刀流が可能であることをいきなり見せつけた。昨年のWBCでは、名実ともに「世界最高の野球選手」として、日本のみならず世界の野球ファンの期待を一身に背負いながら、それを上回るパフォーマンスを見せた。プレッシャーのかかる状況を楽しんで力に変えられる。それこそが大谷の最大の武器だと言える。

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