震災から2カ月が経過した輪島朝市。焼け跡は火災直後とほとんど変化がなく、がれきが残っていた=2024年3月1日午後5時26分、石川県輪島市

 大災害の後、被災地や被災者らに送られるのが「がんばろう」といった励ましのメッセージだ。だが、言葉を送る側は純粋な思いでも、その「がんばれ」というエールが逆に被災者や遺族をつらくさせ、孤独感を強めてしまうリスクがあるという。能登半島地震から2カ月。専門家は、過剰な励ましやアドバイスではなく、「そっと寄り添うこと」の大切さを訴える。

【資料】日本うつ病学会が公表したメッセージはこちら

 2011年3月に発生した東日本大震災の後、「がんばろう」などの励ましのメッセージがメディアを通じて盛んに流されたり、「がんばろう〇〇」と名付けられたイベントが各地で行われたりした。

 同年の7月1日、「日本うつ病学会」は、過剰な励ましは被災者や遺族を苦しめてしまうリスクがあるとして、提言を公表した。

「これ以上、どうがんばれば」

《被災者の方々のお立場からすると、「がんばれ」、「強く」、「絶対」、あるいは「大丈夫」といった言葉がともすればつらく感じられることがあり、キャンペーン活動に違和感を覚える人が少なくないことも事実です。大切な家族や親族、友人を亡くされた方、そして生活の糧を失った方の中には、「何をどうがんばればよいのか」、あるいは、「これ以上、どうがんばれというのか」という思いもあることを、私たちは知らなければなりません》 

 元旦に発生した能登半島地震から2カ月が過ぎ、復興を支援しようと「がんばろう」と銘打ったフェアなどが少しずつ始まっている。

「被災した方々やご遺族にとっては、むしろこれからが精神的に大変な時期になります」 

 と話すのは、日本うつ病学会広報委員長で精神科医の鈴木映二さん(東北医科薬科大学・医学部精神科学教室教授)だ。 

 鈴木さんによると、個人差はあるものの、災害の被災者は次のような心の状態をたどるという。

著者プロフィールを見る
國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

國府田英之の記事一覧はこちら
次のページ
発生から数カ月で「幻滅期」