大災害の後、被災地や被災者らに送られるのが「がんばろう」といった励ましのメッセージだ。だが、言葉を送る側は純粋な思いでも、その「がんばれ」というエールが逆に被災者や遺族をつらくさせ、孤独感を強めてしまうリスクがあるという。能登半島地震から2カ月。専門家は、過剰な励ましやアドバイスではなく、「そっと寄り添うこと」の大切さを訴える。
2011年3月に発生した東日本大震災の後、「がんばろう」などの励ましのメッセージがメディアを通じて盛んに流されたり、「がんばろう〇〇」と名付けられたイベントが各地で行われたりした。
同年の7月1日、「日本うつ病学会」は、過剰な励ましは被災者や遺族を苦しめてしまうリスクがあるとして、提言を公表した。
「これ以上、どうがんばれば」
《被災者の方々のお立場からすると、「がんばれ」、「強く」、「絶対」、あるいは「大丈夫」といった言葉がともすればつらく感じられることがあり、キャンペーン活動に違和感を覚える人が少なくないことも事実です。大切な家族や親族、友人を亡くされた方、そして生活の糧を失った方の中には、「何をどうがんばればよいのか」、あるいは、「これ以上、どうがんばれというのか」という思いもあることを、私たちは知らなければなりません》
元旦に発生した能登半島地震から2カ月が過ぎ、復興を支援しようと「がんばろう」と銘打ったフェアなどが少しずつ始まっている。
「被災した方々やご遺族にとっては、むしろこれからが精神的に大変な時期になります」
と話すのは、日本うつ病学会広報委員長で精神科医の鈴木映二さん(東北医科薬科大学・医学部精神科学教室教授)だ。
鈴木さんによると、個人差はあるものの、災害の被災者は次のような心の状態をたどるという。