嵐電[京都府]/桜の季節(3月下旬~4月上旬)には鉄道ファンだけでなく、世界中から観光客が訪れる(京福電気鉄道提供)
嵐電[京都府]/桜の季節(3月下旬~4月上旬)には鉄道ファンだけでなく、世界中から観光客が訪れる(京福電気鉄道提供)

■春は「桜のトンネル」に

 矢野さんによれば、春の鉄道の魅力は、冬から春に季節が変わり、山や海、木々や街などすべての景色が色づいていく様子を感じられるところだ。

「JR東北線」の大河原駅(宮城県大河原町)-船岡駅(同柴田町)の車窓から見る「白石川堤一目千本桜」も、そんな一つ。

 この一目千本桜は、宮城県南部を流れる白石川沿いに延々約8キロにわたる桜並木で、1200本近くが植えられている。車窓から見るかれんな淡紅色にも心引かれるが、船岡駅で途中下車して並木道を歩いてほしい、と矢野さんは言う。

AERA 2023年4月3日号より
AERA 2023年4月3日号より

「風が吹くと、桜の花吹雪に包まれ夢のようです」

 京都にも矢野さんオススメの春の鉄道がある。京福電気鉄道が運行する「嵐電(らんでん)」。京都市内を走る路面電車で、本線(四条大宮~嵐山)と北野線(帷子ノ辻(かたびらのつじ)~北野白梅町)の2路線がある。沿線に桜の名所は数知れずあるが、とりわけ北野線の鳴滝~宇多野駅間の線路両側には約70本の桜が立ち並び、春は「桜のトンネル」となる。

 ガタンガタン……。列車は、ゆっくりと京の街を行く。

「桜との距離も近く、窓の向こうを流れる桜を見ると、不思議なくらい心が浮き立ちます。重たい上着を置いて出かけられ、旅の荷物も軽くなります」(矢野さん)

 春爛漫(らんまん)。のんびり列車に乗って旅に出よう。車窓に広がる、春を探しに。

(編集部・野村昌二)

AERA 2023年4月3日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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