Bさんは、

<業務妨害や名誉毀損等の疑いがありますので、〇〇様がお望みのような合法な抗議は十分に可能かと存じます>

 との内容のメールを保存している。

 個人情報がさらされ、相談できる相手もいなかったBさんは面接の翌日、川口弁護士名義の口座に着手金22万6千円を入金した。

 しかし、落札者の書き込みはいっこうに削除されない。

 川口弁護士に電話をしても「やっています」「訴訟が立て込んでいて」とのらりくらりと逃げ、放置されるばかり。川口弁護士に具体的にどんな交渉、措置をとっているのか問い合わせても返事がない。

 1年以上が経過し、いつしか落札者のアカウント自体が消え、Bさんの個人情報も削除されていたという。

だまされた人を今度は弁護士がだます格好に

「川口弁護士は人の悩みにつけこんで、絶対に解決できるという言葉を繰り返し、お金を払うとごまかしに転じる。まさに弁護士の肩書を使った着手金詐欺だと私は思います。本当に腹が立つ」

 国際ロマンス詐欺、投資詐欺などの事件を数多く取り扱う青砥洋司弁護士は、

「国際ロマンス詐欺は、5年前くらいは実際にロマンスがあった例も見受けられ、被害回復の可能性がゼロではなかった。しかし今は、被害金の振込先が個人口座ならまず回収できません。ネットトラブルの場合は、日本の大手の業者なら弁護士が手続きを踏めば解決できることもある」

 と話した上で、

「私も消費者被害事件をよくやっているなかで、川口弁護士が何もやってくれない、着手金だけとられて、という話は入っていた。こういう弁護士は、広告業者などが間入り、実際には一度だけ話を聞いて放置することが多いとの被害を聞いている。被害に悩む人に寄り添うふりをして二次被害を生み続ける。弁護士としては、業者にカネを抜かれても実際にはほぼ何もしていないので、ちょっとでももうかればいいという考えです。だまされた人を今度は弁護士がだます格好になり、本当に許せない」

 川口弁護士の懲戒請求をしている大阪弁護士会は、

<(川口弁護士の)広告表示は、これを目にした国際ロマンス詐欺又は国際投資詐欺の被害者に対して、一般にこれら事件の被害回復が現実には難しいにもかかわらず、あたかも対象会員へ事件処理を依頼すれば高額の回収が実現できる可能性が高いかのように誤認させる表示>

 などと指摘し、

<国際ロマンス詐欺や投資詐欺等を取り扱う弁護士の広告にご注意ください>

 と呼びかけている。

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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