家族制度や識字率、出生率に基づき、現代政治や社会を分析し、「ソ連崩壊」から「米国の金融危機」などを予言した、フランスの歴史家エマニュエル・トッド。大統領選を控える2024年のアメリカが崩壊しつつあると指摘する彼は、今のアメリカを「2つの概念」を用いて言い表します。その概念とはいったい何か? 2月13日発売の最新刊『人類の終着点――戦争、AI、ヒューマニティの未来』(朝日新書)から一部を抜粋・再編して公開します。
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エマニュエル・トッド:アメリカで起こっていることを理解するために、私が導入しなければならなかった概念が一つあります。
それは「ニヒリズム(虚無主義)」という概念です。この言葉は、スペルで正確に理解しておきましょう。ニヒリズムとは「NIHILISM」と書きます。
この言葉は、1930年代にドイツが陥った狂気を理解するために使われた概念です。もちろん、今のアメリカで起きていることは同じではありません。このニヒリズムが意味するように、戦争や破壊に魅了され、現実の破壊や否定を始めることは、本当に危険なことです。
たとえば今、西側諸国がウクライナでの戦争に勝てないことは明らかです。すでに決着がついていると私は考えます。ロシアは時間をかけて、できる限りのことをするでしょう。
私の予測では、この戦争の終息には5年かかると考えています。5年というのはわれわれにとっては長い時間です。