国内の経済低迷による低賃金や円安を背景に、海外へ出稼ぎに行く日本人は少なくない。それは性風俗産業でも同様だ。マリエさん(仮名・41歳)は、10年間、風俗店に勤め、30代半ばで独立。現在は、日本だけなく国ごとにいくつかの都市を訪れる「ツアー」で多額の報酬を得ている。性風俗の海外出稼ぎの実態について、松岡かすみ記者がまとめた朝日新書『ルポ 出稼ぎ日本人風俗嬢』から一部を抜粋、再編集して紹介する。
本書では、違法である性風俗業での海外出稼ぎの実体験のみならず、出稼ぎがはらむリスクやそこに至る社会的要因などを多方面から取材。個人の責任如何でなく、現代日本社会全体で考えるべき問題を提起している。
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料金は1時間600ドル〜
主なターゲットは、出張などで日本を訪れる海外のリッチなビジネスマン。SNSや英語版ホームページなどを通じ、マリエさんに興味を持った男性から直接問い合わせが入る。日程や場所、金額や内容などの条件が合えば、男性の宿泊先を訪ねて仕事をするという流れだ。
加えて、自分も海外に出稼ぎに行く。海外での仕事は、国ごとにいくつかの都市を訪れるツアーを組むのが主だ。事前にSNSで、訪問予定の都市と日程の目安について告知し、客からの問い合わせに個別に対応する。料金は米ドルで1時間600ドル~(現在の日本円で約8万7千円〈1ドル=145円換算。以下同〉)に設定しているが、あくまで目安。短時間で良い客もいれば、数週間~1カ月単位と、長い期間を共にすることを希望する客もいる。なかには「毎月これぐらい払うから、関係性を維持してくれ」という客もいる。そうした場合、客から額を提示されることになるが、提示額が設定料金を下回ることはないため、応じることが多い。