「10年戦争」を覚悟
その戦争によってスウェーデンの支配下にいたスラブ人を、ロシア帝国の元に迎え入れたんである、彼は「それはスウェーデンから領土を奪い取ったんじゃない。そもそも、スラブ人が住んでいるところをスウェーデンが占領していたのだ」と言っていたんです。
そこを「取り戻したにすぎないんだ」と、こういう言い方をした。ウクライナ侵攻をしたプーチンは、そのときにピョートル大帝がスウェーデンの支配下にいたスラブ人を救い出したということを、今、自分がウクライナ東部にいるロシア人を助けようとしているんだってところと、二重写しにしているような気がするんですね。
この北方戦争は、21年間続きました。プーチンはおそらく、ウクライナに対して最初は3日間でカタがつくんだろうと思ったけれど、それができなくなってしまった。そして、NATOが全面的にウクライナを支援しているということは、もう少なくとも10年戦争を覚悟しているんだろうと思うんですね。
なので、プーチンが健在である限り、残念ですが、戦争はまだまだ続くと私も現時点ではそう思っています。
(構成/編集部・小長光哲郎、通訳・大野舞)
※AERA 2023年6月19日号より抜粋
エマニュエル・トッド
エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)
歴史家、文化人類学者、人口学者。1951年フランス生まれ。家族制度や識字率、出生率に基づき現代政治や社会を分析し、ソ連崩壊、米国の金融危機、アラブの春、英国EU離脱などを予言。主な著書に『グローバリズム以後』(朝日新書)、『帝国以後』『経済幻想』(藤原書店)、『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』『第三次世界大戦はもう始まっている』(文藝春秋)など。
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エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)
歴史家、文化人類学者、人口学者。1951年フランス生まれ。家族制度や識字率、出生率に基づき現代政治や社会を分析し、ソ連崩壊、米国の金融危機、アラブの春、英国EU離脱などを予言。主な著書に『グローバリズム以後』(朝日新書)、『帝国以後』『経済幻想』(藤原書店)、『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』『第三次世界大戦はもう始まっている』(文藝春秋)など。