「あまちゃん」で一躍名をはせた三陸鉄道。今年で開業40周年、4月13日には記念式典も予定されている
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 「あまちゃん」で一躍名をはせた三陸鉄道が今年で開業40周年。4月13日には記念式典も予定されている。AERA 2024年2月26日号より。

【写真】震災学習列車でガイドを務める千代川らんさん

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「厳しい状況には危機感を持っています。最大の課題は想定以上に進む『少子化』です」

 こう話すのは、岩手県内を走る「三陸鉄道」旅客営業部長の橋上和司さん(59)だ。

 三陸鉄道は岩手県や沿線市町村が出資する第三セクター。2011年の東日本大震災では大きな被害を受けたが、数日後には一部区間で運賃無料の運行を再開。復興の象徴的な存在となった。NHKの朝の連続ドラマ「あまちゃん」のモデルになったことでも知られる。

過去最大の経常損失

 14年には全線で運行再開。19年には旧JR山田線の一部が営業移管され、第三セクターの鉄道で最長の「三陸鉄道リアス線」が開業した。しかし、ここ数年は赤字が続く。23年度の経常損失は過去最大の約7億1200万円になる見通しだ。

「乗車数は22年度より2万人ほど増えている。しかしそれを上回る『通学定期利用の減少』が起きているんです。少子化は全てのローカル鉄道に共通する課題でしょう。一気に好転させる妙案はなく、地道に営業施策を工夫していくしかない」

 橋上さんが期待を寄せるのが、毎年同社に加わる「若い力」だ。昨年4月も5人が入社した。

「開業した1984年の年間利用者数は約268万人。いまは約61万人です。そんな中で三陸鉄道を選んで入社してくれる彼らは、運転士候補生も含めて将来の目標をきちんと持てている人が多いと感じます」

 三陸鉄道と言えば「こたつ列車」「お座敷列車」などユニークな企画が人気だが、12年から始まった「震災学習列車」もその一つ。21年からそのガイドを務めるのが19年入社の千代川らんさん(24)だ。

 被災したのは小学6年生のとき。岩手県山田町の自宅は津波で「大規模半壊」の認定を受けた後、取り壊した。家族は無事だったが、千代川さんは3カ月の避難所生活の後、仮設住宅で8年間を過ごすことになった。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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