ただ、すぐに電子書籍も含め40万部を売り上げ、ノンフィクション部門としては史上最速を記録するなど関心は極めて高い。「ヘンリー王子の生の意見を知るのが楽しみ」という英国の読者の声もある。一方、世論調査によると、王子への好感度は26%と最も低くなった。
400ページ超で4千円以上する大書の内容は、従来とは次元の違う生々しさだ。兄から暴力を振るわれたり、父から「自分の子ではない」とからかわれたりした話もある。初体験やコカイン吸引さえ盛り込まれる。
特に、キャサリン妃とメーガンさんの確執については驚くべき暴露があった。
■顔をしかめた義姉批判
18年、ウィリアム皇太子(40)とキャサリン妃、それに婚約中のヘンリー王子とメーガンさんはロイヤル・ファンデーション(王室基金)のフォーラムを開いた。4人は「ファブフォー(素敵な4人組)」と呼ばれるなど期待が集まった。登壇を前に、メーガンさんがリップグロスを忘れたことに気がつく。それでキャサリン妃に「リップグロスを貸してくれない」と頼んだ。キャサリン妃は驚いた様子だったが、しぶしぶバッグを開けて小さなチューブを取り出した。メーガンさんは指につけて塗り終わるとキャサリン妃に返したが、彼女は顔をしかめていた。
ここでヘンリー王子は化粧品を忘れた妻ではなく、顔をしかめた義姉を批判するのだ。「気持ちよく貸してあげればいいではないか。なんて心が狭いのだ」と言わんばかり。コロナ禍前とはいえ、リップグロスは唾液(だえき)に触れる可能性もあり衛生的にも他人との貸し借りは避けたいはず。キャサリン妃の反応はもっともで、王子は彼女をおとしめようとしていると批判された。(ジャーナリスト・多賀幹子)
※AERA 2023年1月23日号より抜粋