「下がる要素がない」

「実際に購入者がそのマンションに住む『実需』の市場ならそうなるはずなのですが、今回は東京がこんなに値上がりしているのに、そうはなっていないのです。となると、値上がりをリードしている都心6区は実需の市場ではないことになります。そう、投資用に購入する外資や日本人の富裕層が主導するマーケットになっているのです」(井出上席主任研究員)

 供給面から見ると原価の値上がりが売り出し価格を押し上げ、需要側から見ると、その値上がりをビクともせず吸収できるお金持ちたちが買い手側にいる──となると、値上がりが値上がりを呼ぶ局面が今後も続くことになる。実際、沖氏が、

「あと2~3年は上がり続けると思いますよ」

 と言えば、先の置鮎氏も、

「ニューヨークや香港、シンガポールに比べると東京の地価はまだ低いといわれています。現状では外資の勢いは止まらず、下がる要素はなかなか見当たりませんね」

 日銀の政策変更は影響しないのか。物価上昇と賃金上昇の好循環が見込まれつつあることから、日銀は春にもマイナス金利を解除し、政策金利を「0%」にするとの見方が広がっている。しかし、住宅ローン比較サービス「モゲチェック」を運営するMFSの塩澤崇氏によると、

「その場合、変動型住宅ローンを同じ幅0.1%引き上げる銀行が出てくるかもしれませんが、それ以上大幅に上げることにはならないでしょう。0.1%の金利引き上げで総返済額は約2%増えますが、それで不動産価格が崩れるかというと、そうはならないと見ています」

(編集部・首藤由之)

AERA 2024年2月26日号より抜粋

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