AERA 2024年2月26日号より

 ともに港区の大型物件。総戸数1002戸の「三田ガーデンヒルズ」の第1期の販売価格は1億500万~45億円で、平均坪単価は1300万円程度にもなる。JR浜松町駅近く、世界貿易センタービルの建て替えでできる46階建ての「WORLD TOWER RESIDENCE」は駅直結の屈指の好立地を誇る。

 ほかにも価格を牽引したわけではないが、東京五輪の選手村をマンションにした「晴海フラッグ」(中央区)のタワー棟の売り出しも始まり、平均倍率が15倍を超す人気となっている。

 しかし、これらの特殊事情を除いたとしても、基本トレンドの「右肩上がり」は変わらない。なぜ23区のマンションは値上がりし続けるのか。

「やはり異次元緩和による低金利が長く続いていることが大きな要因です。低金利になると不動産にお金が入ってくるのは世の習いです」(不動産鑑定士の置鮎謙治氏)

「都心に特殊な市場」

 20年代に入ってからの世界的な物価高も大きく影響している。建築資材は高騰し、働き方改革で人件費も上がった。

 不動産コンサルタントで独特のマンション投資法で知られる沖有人氏が言う。

「新築マンションは『積算』の世界なんです。販売価格は土地の代金と建築費が乗っかった金額で決まるしかありません。その両方が値上がりして原価が上がっているのですから、販売価格が下がるわけがないのです」

 沖氏によると、マンションの土地の仕入れは2年以上前に行われるから、足元の地価の値上がりは数年先の売り出し価格にまで影響を与えるという。

 一方、マンション取引の膨大なデータ分析から「23区の一部に特殊なマーケットが出現している」とするのは、東京カンテイの井出武・上席主任研究員だ。

「23区を詳しく分析すると、大きく値上がりしているのは全体ではなく千代田、港、中央、渋谷、新宿、文京の都心6区だけであることがわかりました」

 普通なら東京が値上がりしたら周辺へ需要が移る、つまり東京での取得が相対的に減り、千葉や埼玉での取得が増えるのが過去の事例からわかっている。

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