韓国国内で、「弱すぎる」、「情けない」などSNS上で批判の声が多く上がる一方で、国境を越えて心をつかんだのが、大谷だった。メジャーの舞台で、投打の二刀流で異次元のパフォーマンスを続けていたため以前から注目度は高かったが、今回のWBCで活躍ぶりを韓国メディアが連日大きく取り上げた。規格外のプレーだけでなく、甘いマスク、誠実で謙虚な姿勢も好感度が高まった理由だろう。決勝・米国戦で頂点に立った試合後のインタビューで、「日本だけじゃなく、韓国も台湾も中国も、またその他の国も、もっともっと野球を大好きになってもらえるように、その一歩として優勝できたことが良かったなと思うし、そうなってくれることを願っています」と答えたことも大きな反響を呼んだ。

 韓国に駐在する一般紙記者は「大谷の人気は韓国でも凄い。ナショナルチームが国際試合で結果を残していないことも影響して、野球人口の減少が危惧されていますが、大谷を目指して投手と野手の二刀流でプレーを熱望する子供たちは増えている。同じアジア人として、あれだけ凄い活躍を見せている姿は大きな励みになっていると思います」

 大谷は勝利への執着心を前面に出す一方で、野球を楽しむ姿勢を常に忘れない。韓国戦でも二塁の塁上でキム・ハソンと談笑する光景が見られた。野球で見せる高水準のパフォーマンスだけでなく、立ち振る舞いや野球に向き合う姿勢が世界の野球ファンに愛される秘訣だ。

 「打倒・日本」を掲げた韓国代表は、大谷を筆頭に個々の選手の能力、チームの組織力で侍ジャパンと大きな差を感じただろう。苦い敗戦を糧に、もう一度はい上がれるか。大谷を目指した子供たちが韓国代表として、侍ジャパンに立ちはだかる日が来るかもしれない。(今川秀悟)